障害(補償)給付
傷病が療養によって治癒したが、身体に一定の障害が残った場合、その障害の程度に応じて障害(補償)年金または障害(補償)一時金が支給されます。
さらに、障害(補償)年金を受けることができる場合には、一定額を前払いとして受けることができる障害(補償)年金前払一時金という制度があります。
また、障害(補償)年金を受けていた労働者が死亡した場合、受け取った年金額が一定額に満たないときには、その差額が支給される障害(補償)年金差額一時金という制度もあります。
障害等級と障害(補償)給付の額
身体障害の程度により第1級から第14級までの14等級に区分した障害等級が、労働者災害補償保険法施行規則別表第1に定められています。このうち、第1級から第7級までの障害に対しては障害(補償)年金が、第8級から第14級までの障害に対しては障害(補償)一時金が支給されます。
障害等級 | 支給方法 | 支給額 | 障害等級 | 支給方法 | 支給額 |
---|---|---|---|---|---|
1級 | 年金 | 313日分 | 8級 | 一時金 | 503日分 |
2級 | 277日分 | 9級 | 391日分 | ||
3級 | 245日分 | 10級 | 302日分 | ||
4級 | 213日分 | 11級 | 223日分 | ||
5級 | 184日分 | 12級 | 156日分 | ||
6級 | 156日分 | 13級 | 101日分 | ||
7級 | 131日分 | 14級 | 56日分 |
障害が複数残った場合
- 原則は併合(複数の障害を一つの障害とみなす)
- 重い方の障害等級とします(例えば、第11級と第14級の場合は第11級)
- 例外(併合してさらに重い等級へ繰り上げる)
- 第13級の障害が2以上あるときは、重たい方の障害等級を1級繰り上げます(例えば、第11級と第13級の場合は第10級)
- 第8級以上の障害が2以上あるときは、重たい方の障害等級を2級繰り上げます(例えば、第6級と第8級の場合は第4級)
- 第5級以上の障害が2以上あるときは、重たい方の障害等級を3級繰り上げます(例えば、第4級と第5級の場合は第1級)
ただし、第9級と第13級の組み合わせは繰り上げて第8級とならず、第9級の一時金額と第13級の一時金額を合算した額となります。
第11級と第13級の場合は第10級となりますが、額を見てみると第11級は給付基礎日額の223日分、第13級は101日分、第10級は302日分です。単純に第11級と第13級の額を合算すると給付基礎日額の223日分+101日分=324日分となり、第10級の302日分より高い金額になります。
同様に第9級と第13級の組み合わせを計算すると、第8級は給付基礎日額の503日分、合算した額は給付基礎日額の391日分+101日分=492日分となり、併合繰り上げした方が合算額より高くなってしまうので、この組み合わせだけは単純に合算した額を一時金とします。
すでに障害があった者が同一部位に新たな障害により程度を重くした場合
加重(障害)といい、次のような額が支給されます。
- 加重前・後の障害がともに障害等級第7級以上の場合
- (加重後の障害(補償)年金額)-(既存障害の障害等級に応じた障害(補償)年金額)
- 加重前の障害が第8級以下で、加重後の障害が第7級以上の場合
- (加重後の障害(補償)年金額)-(既存障害の障害等級に応じた障害(補償)一時金額の25分の1)
- 加重前・後の障害がともに障害等級第8級以下の場合
- (加重後の障害(補償)一時金額)-(既存障害の障害等級に応じた障害(補償)一時金額)
自然に障害の程度が変更した場合
障害の程度が自然に変更し、他の障害等級に該当するようになったときは、その翌月から変更後の障害等級に応じた額が支給されます。障害等級第7級以上のものが第8級以下となったときは年金が打ち切られ、その等級に応じた一時金が支給されます。
第8級以下の障害(補償)一時金を受けた者の障害の程度が変更になっても、新たな年金または一時金の支給はありません。
障害(補償)年金前払一時金
2ヶ月ごとに支給される障害(補償)年金の前払いとして、一定の範囲内の年金額を一括して一時金として支給するのが障害(補償)年金前払一時金です。
前払一時金の額は、障害(補償)年金の障害等級に応じ、等級ごとの最高限度額または給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1,000日分、1,200日分のうちその最高限度額に満たない額とされています。
障害等級 | 最高限度額 |
---|---|
第1級 | 給付基礎日額の1,340日分 |
第2級 | 給付基礎日額の1,190日分 |
第3級 | 給付基礎日額の1,050日分 |
第4級 | 給付基礎日額の920日分 |
第5級 | 給付基礎日額の790日分 |
第6級 | 給付基礎日額の670日分 |
第7級 | 給付基礎日額の560日分 |
障害(補償)年金前払一時金の請求方法
障害(補償)年金前払一時金の請求は、原則として傷病が治癒した日の翌日から2年以内に障害(補償)年金の請求と同時に行わなければなりません。しかし、例外として、障害(補償)年金の支給決定の通知があった日の翌日から1年を経過する日までの間は、障害(補償)年金の請求をしたあとでも請求することができます。
障害(補償)年金の支給停止
障害(補償)年金前払一時金が支給されると障害(補償)年金は支給が停止されます。停止期間は、障害(補償)年金の額が前払一時金の額に達するまでですが、前払一時金が支給された月後最初の障害(補償)年金の支払期月から1年を経過した月以後各月に支給されるべき障害(補償)年金については、年5分の単利で割り引いた額で計算されます。
障害(補償)年金差額一時金
障害(補償)年金を受けていた者が死亡した場合で、それまでに支給された障害(補償)年金および障害(補償)年金前払一時金の合計額が障害等級別給付額に満たないときは、その額に達するまでの差額が支給されます。
障害等級 | 給付額 |
---|---|
第1級 | 給付基礎日額の1,340日分 |
第2級 | 給付基礎日額の1,190日分 |
第3級 | 給付基礎日額の1,050日分 |
第4級 | 給付基礎日額の920日分 |
第5級 | 給付基礎日額の790日分 |
第6級 | 給付基礎日額の670日分 |
第7級 | 給付基礎日額の560日分 |
障害(補償)年金差額一時金を受け取れる遺族
順位 | 生計同一関係 | 遺族 |
---|---|---|
1 | 労働者の死亡当時生計を同じくしていた | 配偶者 |
2 | 子 | |
3 | 父母 | |
4 | 孫 | |
5 | 祖父母 | |
6 | 兄弟姉妹 | |
7 | 労働者の死亡当時生計を同じくしていなかった | 配偶者 |
8 | 子 | |
9 | 父母 | |
10 | 孫 | |
11 | 祖父母 | |
12 | 兄弟姉妹 |
障害(補償)年金差額一時金を受け取れる遺族が複数いる場合は、1人の受ける額はその人数で除した額となります。