通勤災害

労災保険法では、通勤を次のように定義しています。「通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。」

通勤
  1. 住居と就業の場所との間の往復
  2. 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
  3. 第1号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

通勤災害は、通勤による負傷、疾病、障害、死亡をいい、通勤との相当因果関係がある場合を指します。

通勤の逸脱・中断

逸脱・中断

原則として、通勤の途中で経路を逸脱し又は中断した場合は、その逸脱又は中断の間及びその後の往復は通勤としないとされています。例えば、帰宅途中通勤経路上にあるスナックへ立ち寄り、その後通常の経路で帰宅した場合、スナックで過ごしている間とその後の移動については通勤とみなされません。

ただし、その逸脱・中断が日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものややむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱・中断の間を除き通勤とみなされます。

通勤の津柱で行う次のような些細な行為は逸脱・中断としては取り扱いません。

  • 経路の近くにある公衆便所を使用する場合
  • 経路上の店でタバコ、雑誌等を購入する場合
  • 駅構内でジュースを立ち飲みする場合
  • 経路上で商売している大道の手相見、人相見に立ち寄ってごく短時間手相や人相を見て貰う場合など

日常生活上必要な行為とは?

労働者災害補償保険法施行規則第8条で次のように定められています。

  1. 日用品の購入その他これに準ずる行為
  2. 職業訓練、学校教育法第一条 に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
  3. 選挙権の行使その他これに準ずる行為
  4. 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
  5. 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)

通勤による負傷・死亡

「通勤による」とは、通勤と相当因果関係があること、すなわち、通勤に通常伴う危険が具現化したことを言い、業務災害の場合の業務起因性に相当する考え方です。

具体的には次のようなケースは通勤災害として認定されます。

  • 通勤途中自動車にひかれた場合
  • 電車が急停車したため転倒して負傷した場合
  • 歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体により負傷した場合
  • 帰宅途中ひったくりに遭い、転倒して負傷した場合
  • 転覆したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒に罹った場合

通勤による疾病

通勤による疾病は「通勤による負傷に起因する疾病その他通勤に起因することが明らかな疾病」と規定されています。

業務上の疾病とは異なり、具体的な疾病は列挙していないので、通勤と疾病との因果関係の相当性によって判断されます。

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