労働基準法との調整

業務災害について労働基準法は、使用者に災害補償の義務を課していますが、同一の理由で労災保険が給付された場合は、労働基準法上の補償は免責されます。

ただし、労災保険の休業補償給付(業務災害)は休業第4日目から行われるので、待期3日間については使用者に労働基準法上の休業補償を行う義務があります。

他の社会保険等との調整

国民年金、厚生年金保険の年金給付等は業務上、業務外の事由を問わず支給されるので労災保険の給付との調整が行われます。その場合、原則として労災保険の保険給付は一定の調整率を乗じて減額され、国民年金、厚生年金保険の年金給付は全額支給されます。

傷病(補償)年金
および
休業(補償)給付
障害(補償)年金遺族(補償)年金
障害厚生年金0.860.83****
障害基礎年金0.880.88****
障害厚生年金および障害基礎年金0.730.73****
遺族厚生年金********0.84
遺族基礎年金または寡婦年金********0.88
遺族厚生年金および遺族基礎年金********0.80

同一事由により厚生年金保険の障害手当金と労災保険の障害(補償)給付とが併給されることはありません。障害(補償)給付が減額されずに支給され、障害手当金は支給されません。

第三者の行為による事故

第三者行為

業務災害や通勤災害が第三者の故意や過失によって生じた場合は、被災労働者は労災保険の給付請求権を持つと同時に第三者に対して損害賠償請求権を持つことになります。この場合、両方の請求権を行使させると損害が二重に填補されることになるので、調整の対象となります。

第三者の行為によって生じた事故で、保険給付をしたときはその給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得することになります。図でいえば、赤い矢印が受給権者から保険者へ移動した状態が前述のケースです。これを損害賠償請求権の代位取得といいます。

逆に、保険給付を受けるべき被災労働者が第三者から同一の事由で損害賠償を受けたときには、その価額の限度で保険給付をしないことができるとされています。

労災保険は、被災労働者の傷病について行うものなので、損害賠償として受けた慰謝料、見舞金等の額は調整の対象とはなりません。

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